【2023~2026】4年に1度のゴルフルール改訂について
2023年のゴルフ規則改訂の詳細が発表され、ゴルフ界に新たな風が吹き込もうとしています。
今回の改訂は2019年の大改訂以来の重要な変更となり、通常の4年に1度のマイナー改訂を超える範囲と深さを持っています。
この記事では、(公財)日本ゴルフ協会 規則委員会が発表した2023年ゴルフ規則改訂の概要をもとに、主要な変更点とその影響について詳しく解説していきます。各変更がプレーヤーの日常のゴルフ体験にどのような影響を与えるか、そしてこれらの変更がゴルフ界全体にもたらす可能性のある長期的な影響についても考察します。
1. 一般的な変更点
プレーヤーズ版の廃止とアプリの拡充
2019年に導入されたプレーヤーズ版が廃止され、代わりにR&Aのゴルフ規則アプリが大幅に拡充されます。このアプリは無料でダウンロードでき、日本語版のゴルフ規則を閲覧できるほか、ビデオやクイズなども日本語で提供されます。
影響:
- 環境への配慮:紙の使用量削減につながります。
- アクセシビリティの向上:スマートフォンで簡単に規則を確認できるようになります。
- 学習効果の向上:ビデオやクイズを通じて、より効果的に規則を学ぶことができます。
- リアルタイムの更新:規則の解釈や変更をリアルタイムで反映できます。
障がいを持つゴルファーのための規則の統合
これまでオフィシャルガイドの巻末に掲載されていた障がいを持つゴルファーのための規則が、プレーの規則の25条として正式に組み込まれました。
影響:
- インクルージョンの促進:障がいを持つゴルファーの参加がより円滑になります。
- 認知度の向上:この規則が主要な規則の一部となることで、より多くのプレーヤーや運営者が認識するようになります。
- 競技運営の標準化:障がいを持つプレーヤーを含む競技の運営がより標準化されます。
ゴルフ規則書とオフィシャルガイドの位置づけ
アプリの拡充に伴い、ゴルフ規則書とゴルフ規則のオフィシャルガイドの位置づけが明確化されました。これらは主に委員会のメンバーやレフェリーのために発行されます。
影響:
- 専門家向けのリソース:より詳細な解釈や複雑なケースの解説が提供されます。
- 一般プレーヤーとの情報格差:一般プレーヤーとルール専門家の間で、アクセスできる情報に差が生じる可能性があります。
2. プレーの規則における主要な変更
複数の規則違反に対する罰の適用(規則1.3c(4))
複数の規則違反があった場合の罰の適用が、「介在する出来事」の有無によって決定されるようになりました。介在する出来事は、①ストロークの終了、または②違反に気づいた場合、の2種類です。
例:
バンカーでの練習スイング中に複数回砂に触れた場合:
- 2019年ルール:関連する違反かどうかの判断が必要で複雑
- 2023年ルール:ストロークを行うまでは1回の違反として扱われる(2罰打)
影響:
- 判断の簡素化:レフェリーやプレーヤーにとって、罰の適用がより明確になります。
- 公平性の向上:同様の状況下での罰の適用がより一貫したものになります。
スコアカードのハンディキャップ表示(規則3.3b(4))
スコアカードにハンディキャップを正しく記入する責任が、プレーヤーから委員会に移行しました。
影響:
- プレーヤーの負担軽減:誤ったハンディキャップ記入による失格のリスクがなくなります。
- 委員会の責任増加:正確なハンディキャップ管理がより重要になります。
- 競技の公平性向上:ハンディキャップに関する誤りが減少することが期待されます。
損傷したクラブの交換(規則4.1a(2))
ラウンド中に損傷したクラブの交換が、特定の条件下で認められるようになりました。プレーヤーが乱暴に扱ったことが原因でない限り、損傷したクラブを取り替えることができます。
影響:
- プレーの継続性:不慮の事故でクラブが損傷した場合でも、プレーを続行しやすくなります。
- 公平性の確保:プレーヤーの責任外の要因でクラブが使用不能になった場合の救済が可能になります。
クラブのプレー特性の変更(規則4.1a(3))
ラウンド中にクラブのプレー特性を変更した場合、ストローク前に元の状態に戻せば罰なしで使用できることが明確化されました。これは調整可能な機能だけでなく、認められない外部付属物を取り付けた場合にも適用されます。
影響:
- 柔軟性の向上:プレーヤーがクラブの調整を試みても、すぐに元に戻せば罰を受けないため、より自由な試行が可能になります。
- ルールの明確化:「プレー特性の変更」に関する解釈がより明確になります。
間違って取り替えた球に対する罰則の軽減(規則6.3b)
球の取り替えが認められていない状況で誤って球を取り替えてしまった場合、2019年ルールでは一般の罰(2罰打またはホールの負け)でしたが、2023年ルールでは1罰打に軽減されました。
例:
パッティンググリーン上でマークして拾い上げた球の代わりに別の球をプレーした場合:
- 2019年ルール:2罰打
- 2023年ルール:1罰打
影響:
- 罰則の軽減:単純なミスに対する罰が軽減され、より公平な扱いとなります。
- プレーヤーの心理的負担軽減:誤って球を取り替えてしまった場合の影響が小さくなります。
プレーの線を示す物の設置禁止範囲の拡大(規則10.2b(1)(2))
プレーの線を示すために物を置くことの禁止が、パッティンググリーン上だけでなく、コース上のすべてのエリアに拡大されました。
影響:
- 公平性の向上:すべてのエリアで同じルールが適用されるため、より公平な競技環境が整います。
- スキルの重視:プレーヤー自身の判断力と技術がより重要になります。
3. 救済に関する変更
後方線上の救済エリアの変更
ペナルティーエリアからの救済やアンプレヤブルの救済における後方線上の救済エリアが変更されました。新しい救済エリアは、基準線上にドロップした地点を中心に、どの方向にも1クラブレングスの範囲となります。
影響:
- 救済オプションの拡大:プレーヤーにより多くの選択肢が与えられます。
- プレーのペース向上:救済の手続きがより迅速に行えるようになる可能性があります。
地面にくい込んだ球の救済(規則16.3b)
地面にくい込んだ球の救済において、基点をジェネラルエリアに決めなければならないことが明確化されました。球の直後でジェネラルエリアがない場合は、ホールに近づかない最も近い所を決めることが詳説で説明されています。
影響:
- ルールの明確化:救済の手順がより明確になり、プレーヤーの混乱を減らすことができます。
- 一貫性の確保:様々な状況下でも一貫した救済方法が適用できるようになります。
自然の力が動かした球の扱い(規則9.3)
ドロップ、プレース、リプレースした球が自然の力で動いた場合、特定の条件下で罰なしにリプレースできるようになりました。これは、球が別のコースエリアやアウトオブバウンズに転がっていった場合に適用されます。
影響:
- 公平性の向上:プレーヤーの制御外の要因による不利益が軽減されます。
- プレーの継続性:不必要な中断や追加の罰を避けることができます。
4. その他の重要な変更
グリーンリーディング資料の使用制限(詳説4.3a/1)
グリーンリーディング資料の使用制限が、パッティンググリーン上でのストロークを行う場合のみに限定されました。
影響:
- 柔軟性の向上:パッティンググリーン以外でのプレーにおいて、より自由にグリーンリーディング資料を利用できるようになります。
- スキルの重視:パッティング時の読みのスキルがより重要になります。
自立式パターの使用に関する規定
自立式パターの使用に関する規定が明確化されました。用具規則に適合していれば使用可能ですが、規則10.2bに違反する方法での援助のために置くことはできません。
影響:
- 新技術への対応:革新的なパター設計の使用に関するガイドラインが提供されました。
- 公平性の確保:自立式パターの不適切な使用を防ぎます。
キャディーの立ち位置に関する制限(規則10.2b(4))
プレーヤーがストロークを行う前のキャディーの立ち位置に関する制限が明確化されました。「制限される区域」についての詳細な説明が規則に組み込まれました。
影響:
- ルールの明確化:キャディーの適切な位置に関する判断がより容易になります。
- 公平性の確保:不適切な援助を防ぐことができます。
パッティンググリーンからのプレーにおける特殊なケース(規則11.1b(2))
2019年の規則では、パッティンググリーン上でストロークされた球が虫に当たった場合、罰なしで再プレーする必要がありました。しかし、2023年の改訂では、虫に当たった場合でも再プレーせず、そのままプレーを続けることが定められました。
一方、プレーヤー以外の人や動物に当たった場合は再プレーが必要で、再プレーをしない場合には誤所からのプレーにはならず、一般の罰が科されることが明確化されています。
影響:
- 人や動物に当たった場合のルールが明確化され、誤解や不公平な処置が減少します。
- 再プレーを必要とするか否かがより簡単に判断できるため、プレーの進行がスムーズになります。
- 虫に当たった際の再プレーが不要になることで、プレーヤーの心理的負担が軽減されます。
後方線上の救済エリア
2023年の規則では、ペナルティーエリアやアンプレヤブルな状況からの救済の際に適用される後方線上の救済エリアが変更されました。新しいルールでは、球をドロップした地点を基点として、その地点から1クラブレングス内でどの方向にも救済が可能となります。
例:
ペナルティーエリアで球がくい込んだ場合、プレーヤーは基準線上に球をドロップし、その地点を中心に1クラブレングス以内の範囲で救済が可能になります。
影響:
- 救済を行う際の範囲が広がり、プレーヤーに柔軟な選択肢が与えられることで、ストレスが軽減されます。
- 救済エリアが明確化されたことで、ルールに基づく救済手続きがよりスムーズになり、プレーの進行も円滑になります。
規則16.3b 地面にくい込んだ球の救済
2019年の規則では、地面にくい込んだ球の救済エリアの基点がジェネラルエリアに制限されていないため、球の直後にジェネラルエリアが存在しない場合、救済エリアを決めるのが難しいという問題がありました。
2023年の改訂では、救済エリアの基点をジェネラルエリアに定め、もしジェネラルエリアが球の直後にない場合は、ホールに近づかない最も近い場所を基点とすることが詳しく説明されています。
例:
地面にくい込んだ球がグリーンの端にあった場合、直後にジェネラルエリアがない場合はホールに近づかない位置を基点にして救済を受けることができます。
影響:
- 救済エリアの基点が明確化されたことで、プレーヤーがどの位置から救済を行えばよいかを迷わずに判断できるようになります。
- 不正確な救済の処理が減少し、全体的な競技の公平性が向上します。
詳説18.2a(1)/3 球が紛失となる場合
2019年の規則では、球を見つけた後、その球が自分の球であるかどうか確認するために必要な合理的な時間が許されていました。2023年の規則では、この確認に許される合理的な時間は1分間と明確に規定されています。
例:
プレーヤーが球を探している途中で2分50秒経過し、球を見つけたものの、それが自分の球かどうか確認するためにさらに時間がかかる場合、2023年の規則では1分間の追加時間が許可されています。
影響:
- 球の確認にかかる時間が明確に定義されたことで、捜索時間をめぐるトラブルが減少します。
- ルールの一貫性が高まり、プレー進行がよりスムーズになります。
- 球捜索における不公平感が減少し、プレーヤーのストレスが軽減されます。